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熱水変質

  • 執筆者の写真: 茂一 松村
    茂一 松村
  • 7月27日
  • 読了時間: 4分

今回は、西伊豆にある黄金崎(こがねざき)の通称、馬ロックの黄金色の岩肌について記載します。これは、海底火山の噴出物です。


ここは、夕日の名所としても知られており、私はまだ目にしたことがありませんが、夕日が馬ロックに当たると、本当に黄金色に輝くらしいです。黄金崎の名前は、夕日に照らされた断崖の岩肌が金色(黄金色)に輝くことに由来するとか。


ここで、なぜ、黄金崎の断崖(溶岩露頭)はこんな色をしているのでしょうか? 普通、溶岩は黒〜暗緑色、または、二酸化ケイ素(ガラスの成分)の含有量が多くなると一般に白っぽい色になります。


また、ブログのクリンカー

で書いていますが、赤っぽい溶岩は、陸上火山から流出した溶岩が、高温のうちに空気中の酸素と結びつくことで色が変わるもの(高温酸化)で、海底火山では発生しないと記載しました。

「海底火山なので噴火した瞬間には酸化しない(赤くならない)」という大原則を踏まえ、じゃ、なぜこんな色になったかを、下記の4ステップで説明します(赤でなく黄金色になったのですが)。


『黄金崎・馬ロックができるまでの全4ステップ』


【ステップ1:海底噴火と安山岩の誕生】(最初は酸化しない)

 約数百万年前、現在の西伊豆の場所は浅い海底でした(白浜層群の地層の時代)。ここで海底火山が噴火し、どろどろの溶岩が流れ出します。これが冷え固まって「安山岩」になりました。

水中には気体の酸素がないため「高温酸化」は起きません。岩石は酸化されず、黒色〜暗緑色をしていました。


【ステップ2:プロピライト変質の発生】(★ここで、まず緑色に変身)

 堆積した安山岩が地下深くで埋もれているとき、マグマ由来の強い酸性を持つ温泉水(熱水)や二酸化炭素が、岩石の割れ目からジュワジュワと染み込みました。

この熱水の作用によって、安山岩の成分が化学反応(プロピライト変質作用)を起こします。


★ポイント

①緑色への変化:

 岩石中の鉱物が、熱水によって緑泥石(クロライト)という緑色の鉱物に置き換わり、岩石全体が「緑色のプロピライト」に変身しました。

②黄金の素(黄鉄鉱)の誕生:

 同時に、熱水に含まれる硫黄成分と岩石中の鉄分が結びつき、岩石の内部に黄鉄鉱(パイライト)という金属光沢を持つ鉱物の微細な結晶が大量に仕込まれました。


【ステップ3:地殻変動による「陸地化」】(冷え切ってから地上へ)

 フィリピン海プレートの移動に伴い、伊豆半島の土台が本州へと衝突する過程で、この海底の地層全体がモコモコと押し上げられ(隆起)、現在の西伊豆の海岸線として地表に姿を現しました。このとき、岩石はすでに完全に冷え切っています。


【ステップ4:後発的な「風化・酸化」】(ここでついに黄金色へ)

 地上に出たことで、冷え切ったプロピライトの岩肌が、何万年・何百万年という単位で初めて空気(酸素)や雨水・海水にさらされました。


★ポイント

①後からじわじわ錆びる:

 ステップ2で岩の中に仕込まれていた黄鉄鉱などの鉄分が、常温で長い時間をかけてゆっくりと酸化(化学的な錆び)を起こしました。

②鉄が錆びて黄褐色に変わり、周囲の脆い火山灰の層(グリーンタフ)が波で削り落とされた結果、硬い安山岩由来のプロピライトだけが「黄金色の馬の形」として削り残されました。



『まとめ:陸上火山の高温酸化との違い』


・陸上火山の高温酸化(例:いがいが根):

 ステップ1(噴火の瞬間)に陸上の空気でアツアツのまま酸化した ➔ だから赤い

・海底火山の熱水変質(例:馬ロック):

 海底で噴火し、ステップ2(プロピライト生成)で緑色になり、遥か後のステップ4(陸に上がった後)に冷えた状態でじわじわ酸化した ➔ だから黄金色



『その他、用語説明』

プロピライトとグリーンタフの違い


プロピライトとグリーンタフはどちらも、熱水変質作用を受けた溶岩です。違いは下記の通りです。


・プロピライトは、安山岩が熱水によって緑色がかったもの。

・グリーンタフは、凝灰岩が熱水によって緑色がかったもの。


余談ですが、これらの岩石は科学者の間で「腐った溶岩」といわれることがあるそうです。

 
 
 

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